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遺言の活用のポイント

遺言は非常に強い効力を持ちます。私たち専門家であっても、さまざまなケースに関わるうち、遺言の法的な効力の強さを改めて実感する事が非常に多くあります。

当事務所にご相談にいらした方々の中でも、遺言書がどういうものかは大体わかっていても、遺言の本当の効力までを把握されている方は少ないようです。

遺言の効力について、最近の事例をもとに、ご紹介いたします。

ケース1 正式な遺言を作る前に、入院している推定被相続人が亡くなってしまった

これは、遺言のタイミングを逃してしまうと、大きな財産を遺贈してもらえる立場だったのが、まったく何も残らないという結果になってしまうというケースです。

晋さん(仮名)という方が、当事務所に遺言の相談に来られました。

晋さんには、たまたま長い期間看病をしてきた、タエさん(仮名)という義理の母がいました。
タエさんの子供で、晋さんの配偶者である明子さんは、昨年病気で亡くなりましたが、明子さんの死後も晋さんはタエさんの看病を続けていました。
ある時晋さんが病院へ行くと、タエさんから病室で作ったという遺言書を渡されました。その遺言書には「4000万ほどある財産を、一番面倒を見てくれた晋さんに譲りたい」という内容が記されていました。

タエさんの夫はすでに亡く、子供は3人いましたが、そのうちの1人である明子さん(晋さんの配偶者)もすでに亡くなっています。このまま何もしなければ、タエさんの財産の相続人は、タエさんの2人の子供がなる予定でした。

しかし、その子供たちは2人とも遠方に住んでおり、ここ数年は音信不通で疎遠だったこともあり、タエさんは明子さん(晋さんの配偶者)の死後も看病を続けてくれた晋さんに財産を渡したいと思い、自筆遺言を晋さんに手渡したという流れでした。

遺言書を受け取った晋さんは、法律の専門家に相談しようと考えて当事務所へご相談に来られました。

早速、当事務所で遺言書を確認させていただいたところ、残念ながらその自筆証書遺言は法的な形式を満たしておりませんでした。このままではこの遺言が法的に無効となってしまうため、公証人を手配して、早急に遺言を法的に効力あるものに作り直すことをおすすめしました。(病院でも遺言は可能です)

晋さんは、まずタエさんの2人の子に遺言を作り直すことについての相談をしてから、タエさんに病院での公正証書遺言の作成を提案しようと思いましたが、なかなか2人と連絡を取ることはできませんでした。そしてそうこうしているうちに一か月半もの時間が流れてしまい、その間にタエさんは容態が急変して亡くなってしまいました。

<結果>

この後、タエさんの子2人は行政書士・司法書士に相続手続きを任せました。そして結局、晋さんには全く財産の分配はないということです。
晋さんは再度、当事務所へ相談に来られました。特別受益分など裁判所を通じて主張する意思があるのであれば、弁護士の先生もご紹介できることをお伝えしましたが、晋さんは諦めるとの事でした。
被相続人であるタエさんの意思が実現されない結果となり、私どもとしても非常に残念なことでした。

ケース2 遺言によって遺産分割が指定されており、相続財産をほとんど受け取れなかった

光男さん(仮名)は2人兄弟の長男でしたが、幼いころに両親が美弥子さん(仮名)を養子にしたため、兄弟3人で育ちました。
その後年月が経過し、お父様が他界、そして最近お母様も亡くなり、相続財産が3,000万ほどの不動産と1,600万ほどの預金があることがわかっていました。

お母様のお葬式から5日ほど経ったころ、お母様と同居し世話をしていた美弥子さんから連絡がありました。「遺言が出てきたので、遺言に書かれている行政書士に執行を任せた」という内容でした。

光男さんは、お母様が遺言を残していたことにも驚きましたが、美弥子さんが遺言を見つけたことにほんのわずかな疑惑を持ちました。

遺言は公正証書で作成されており、その内容は「葬祭費用などは預貯金から支払い、残った金額の70%と不動産を美弥子さんが相続し、預貯金の残り30%を他の兄弟2人で分けるように」というものでした。

この遺言に従って相続すると、養子である美弥子さんが家(不動産)と1,000万円を相続し、実の子である光男さんと弟さんが相続するのはそれぞれ200万円のみとなります。光男さんたちは特に兄弟間で仲が悪かったわけでもありませんでしたが、晩年のお母様の世話を数年見ていたという理由だけで、養子である美弥子さんがほとんどの財産を相続するなんて… と、悲しさと憤りをもって、当事務所へ相談に来られました。

<結果>

遺留分の請求をするにせよ、弁護士を立てて調停をしていくにせよ、最低でも50~100万円の費用が必要となります。そのことをお伝えすると、光男さんは、大事な時間と費用をかけてまで兄弟でいがみ合うのも嫌なので、素直に遺言に従うことを決断されました。

美弥子さんの立場で考えてみますと、数年間お母様と同居して世話をしてきた苦労が報われたいという思いや、遺産分割によって住んでいた家を売却して分けることになったら、住む場所がなくなってしまうかもしれない、という不安があったかもしれません。

この事例によって、遺言は残された相続人に大きな影響を与えることが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

こんな方は、事前にご相談ください

  • 兄弟の仲が悪く、遺産分割でもめてしまったとき、最低限の相続分を確保したい方
  • 入院中の親族に、万が一のため遺言を作成しておいてもらいたいとお考えの方
  • 相続人に直接面識が無い人(養子や前妻の子など)がいる場合
  • 相続人が多数おり、遺産相続が心配な方(推定被相続人と同居の方は特に)

当事務所では、状況に応じてスピーディに対応できる用意がございますので、お気軽に無料相談にお越し下さい。

この記事を担当した司法書士
司法書士法人ふらっと 代表 菊地 裕文
保有資格代表司法書士
専門分野家族信託 相続 遺言 生前対策
経歴司法書士法人ふらっとの代表を務める。大学在学中にに司法書士試験に合格。 平成16年司法書士登録し、成田市にて司法書士事務所を開業 。平成25年司法書士法人ふらっとを設立し、四街道事務所を開設
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